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2006.04.24

赤いイタリア文化会館

実は、今日の記事の前半は、かなり以前に書いたものです。なんとなく時期を逸して、お蔵入りさせていたのですが、本日の東京新聞でも取り上げられていた(後述)ので、復活掲載ということになりました。

東京千代田区の千鳥ケ淵近くに昨年10月開館した「イタリア文化会館」の壁の色が赤だったことから、周辺住民らが「周辺の緑と調和せず、景観を壊す」と反発、文化交流の拠点をめぐり景観論争が起きている。
──「伊文化会館に住民反発『四国新聞社』060314の記事」より引用

さて、本日も景観の話題です。イタリア文化会館ビルは『新建築』誌 2006年3月号によれば、KAJIMA DESIGN+ガエ・アウレンティだそうで、このアウレンティさんという方を編集長は寡聞にして存じ上げません。

■建物デザイン
どんな建物かは新建築誌をごらん下さい。確かに赤いです。でもこの写真だけ見たら、赤いけどそれほど派手な感じはしませんね(あ、編集長だけ?)。縁取りにはアイボリー色がかなり太い幅で用いられていて、どちらかといえばゼネコン設計部らしい、抑制の効いたデザインであると言えましょう(あ、編集長だけ?)。

■景観は地域のもの
景観を壊している建物に対して、地域住民が意見を言える空気になってきたということなのでしょうね。これは大変良いことだと思います。地域景観というのは、エラい先生が良いの悪いの言うことも大事ですが、最終的には地域住民の皆さんが考えるべき問題だと編集長は常々考えています。

■イタリアなんだし… でも
さて、記事によれば、地域の住民の皆さんが2700人の署名を集めてイタリア政府に塗り直しを求めているということです。実は編集長「イタリアの建物なんだし、ちょっとぐらい派手でも、お国柄が出ていて、それはそれで「アリ」なんじゃないかな?」ぐらいに考えてしまいましたが、コトはそんなに簡単ではありませんでした。

■精神的苦痛
住民代表の方によれば、反射した赤い光が近隣の建物内に差し込んで、精神的苦痛を訴える人もいるとのこと。この精神的苦痛、なんとなく想像がつきませんか?毎日、日がな一日夕焼けよりも赤い光が差し込む部屋。というのは、どう考えても落ち着きません。建物を設計するにあたって、近隣への影響評価というのは、多かれ少なかれ、必ず行うものですが、この場合はこうした影響は、設計者にとって想定外だったということでしょうか。

■これは生活権問題か
編集長は最近、景観権のような概念について考えているところですが、こういう「精神的苦痛」のような「被害」に関しては、景観権ではなく生活権問題と認識できる問題ではないかと考えます。

と、過去に書いた文章を引っ張り出したのは、本日の東京新聞の記事を読んだから。以下に引用します。

イタリアの著名建築家が「漆にインスピレーション(着想)を得た」という外壁だが、周辺住民は反発。環境省と都に先月、約二千七百人分の署名とともに塗り替えの指導を陳情した。これを受け、都が塗り替えを求めたところ、会館側は「本国に問い合わせている」と回答を保留している。住民側は近く外務省にも陳情する予定だ。
もともとこの地域は景観への意識が高い。二年前には、大手自動車メーカーの看板が景観にそぐわないとして住民側が掛け替えを要望し、会社側が応じたこともあった。
地元に五十年以上住む住民代表の不動産会社経営、橋本憲典さんは「水と緑と建物が調和した歴史ある場所に、あの赤い色は耐えられない。隣接するマンションは反射で室内が赤く染まり、住民が被害を受けている」と話す。
──東京新聞「060424の記事」より引用

ふむふむ。やはり住民被害が出ている模様ですね。

記事には「公共の色彩を考える会」常任理事で日本色彩研究所企画準備室長の松井さんという方のコメントが掲載されています。

「イタリア文化会館の赤色は原色に近い鮮やかさで、常識的に考えて外壁の広い面積に用いる色ではない。景観規制が厳しいイタリアでは絶対にこんなことはできない。指導が行き届かなかった行政側の責任が問われてしかるべきだ」
──「同上」より引用

ふむふむ。イタリアでどうか、というのはこの際あんまり関係ないかなと思います。ただし、この松井さんという方の以下のご意見には編集長、賛同いたします。

「景観法の精神は、地域住民が主役となり、街並みをどうしていくか決めていくことにある。住民は孫子の代まで美しい景観を守るにはどうしたらいいかよく考え、意見を束ねていくことが大切だ。行政側は、住民の声にどれだけ素早く対応できるかが問われるだろう」
──「同上」より引用

実物見てないから、何ともいえませんが、編集長が引っかかっているのは、やっぱり景観権以前の問題で、生活権問題になっているのではないかと思うところです。これをきっかけに景観論議が盛り上がるのはいいことだと思いますが、この生活権問題と景観権問題、分けて考えないと議論が混乱しそうです。

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コメント

赤と緑が調和しないか・・・
この建物、樹木の緑と外壁の赤、それに白を挟んで、イタリア国旗色ですね。それが合わないとなると・・・イタリア人に頼んだのがまずかったか?

にしても、高野山でも京都御所でも、大門は朱塗り。ガツーンと紅い。
原色だからダメ、というのはロジックがおかしくはないかな? 紅葉とか・・真っ赤だしネ。

さらに、ベージュに塗り替えれば良いの? という疑問がわきますね。

ネガティブキャンペーンの景観論争は痴話げんかみたい。

にしてもアウレンティ氏、ラショナリストですね。

投稿: hira | 2006.04.24 14:17

原色だからダメ。というのは、論理としておかしい。
だいいち、赤は緑に映えるしね。逆もあるか、、、。

編集長的には、そのあたりを純粋に議論したいワケですが、ここに上記生活権問題みたいな重要な問題が同時発生しているために、その手の議論が普通にできなという状況を(被害にあってらっしゃる地域住民の方には申し訳ないけど)少し残念に思います。

あら?
アウレンティさんがラショナリスト、ってのはどんな意味かいね。

投稿: あさみ編集長 | 2006.04.24 15:25

ラショナル、ちゅうのは、アルド・ロッシらの「イタリア合理主義」のラショナルです。シンメトリーで意味ありげな形で、反復が多いデザイン。rationalを「合理主義」と訳すと、「合理化」、いわゆる最大効率化・最適化を意味しているように聞こえちゃって誤解されやすいけど、このrationalは「理性」という意味で、「おバカな大衆」の反対の意味として使われているのだと思います。(詳しくは知らないが、そう理解しています)

生活権問題、そうですね。
景観美というよりは、「場違いなモンが建ってうっとうしい!」という、気分的なものなのでしょう。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」てなもんですね。

建物の色や形の問題以前に、より深い亀裂が住民との間にあるのだと思われます。色や形の問題として語るとどうしても理性を欠いた痴話げんかに聞こえてきますね。

投稿: hira | 2006.04.25 01:10

お久しぶりです。

生活権というか、すぐ裏手の某高級マンションから苦情が出たのがことの発端ですね。マンション購入時には、イタリア文化会館は建て替え計画中で、色の説明まではなかったらしく。PCに微弾性の塗装なので、そう簡単には塗り替えられますまい...。

千代田区を飛び越えて石原都知事が塗り替えを要求しているのもおかしな話です。靖国神社がごく近くという地理的条件も、日本人の神経を逆撫でするのでしょう。

この件に関しては、一見景観論争のふりをしていて、実はまったく違うところに争点があるような気がします。

投稿: 鳥生 倫 | 2006.04.25 02:45

みなさまご投書ありがとうございます。

>hiraさま
ふむふむ。デザインがラショナルっちゅうワケかいね。
編集長は本文にも書きましたが(アウレンティ氏がどこまでデザインしているのか知りませんけど)ゼネコン設計部的な抑制の効いたデザインだと思うんだけどなあ。

>鳥生さん
ブログは復活しないんですか?結構楽しみだったのにな、、、。
「一見景観論争のふりをしていて、、、」ふむ。なかなか奥が深いのかも知れませんね。だんだん本紙の趣旨と合わなくなってきた感がありますな。

あの赤がいいのか悪いのか、正面から議論してみたいものです(笑
(あ、言っとくけど、編集長は、まだ実物見てないからね。)

投稿: あさみ編集長 | 2006.04.25 12:12

あさみ編集長さま
>ブログは復活しないんですか?結構楽しみだったのにな、、、
いやぁ、恐縮です。一度止めてしまうとなかなか再開するのに気合いがいるもので...
仕事では現在銀座を追いかけています。地元と行政が強いところなので面白いですよ。

投稿: 鳥生 倫 | 2006.04.29 15:46

>鳥生さん
わはは。ま、ぼちぼち再会してみて下さい。お仕事の活躍も楽しみにしてたりして、、。またどこかに記事が出る時は教えて下さい。でわでわ。

投稿: あさみ編集長 | 2006.04.29 19:30

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