住宅の間取りの楽しみ方に関する一考察
前者「間取りの手帖」では本そのもののコンセプトが明記されている訳ではないのですが、賃貸住宅に見られるヘンな間取りを集めたもので、それぞれに付いている一言コメントが笑わせてくれます。「本当にこんな間取りが存在するのか?」と首をかしげたくなるモノも散見されますが、これがフィクションなのかどうかをも明らかにしていないあたりに著者佐藤氏の上手さを感じます。文章の少ないこの本から、おそらくこの本のキモと思われる部分(対談になっています)を引用しておきましょう。
SW お話を聞いていると、好きな住みにくさと、嫌いな住みにくさがあるようですね。
K ありますねぇ。今の実家はコンテンポラリーな3階建てで、ちゃんと設計されたものだから住みやすいんですけど、単に住みやすいだけというか。それに慣れて失ってしまったものもあるのではないかと。
SW 失ったもの・・・・それは何なのでしょう?
K たぶん遊びの感覚だと思うんですよね。無駄に長い玄関とか、ポコッと出っ張ったところとか。
(後略)
──上記「間取りの手帖」より引用
ともあれ、よほど奇怪な家に住みたいというのでもなければ、これから家を借りようとか、家を建てようかという方が参考にしようというのは危険なので一応警告しておきます。え?。コワいもの見たさ、、、、、?。うーん。止めはしませんが、「住宅は住みやすさじゃない!無駄に長い玄関とか、意味不明のドアが欲しい!」などと言い始めたら、もう帰って来れなくなりますよ。
後者「現代住宅研究」は、建築家塚本由晴氏と西沢大良氏の共著です。清家清の自邸から始まって、建築家による20世紀後半の住宅の平面図を採取しており、その意味で資料本としてでもいいから入手しておくべき一冊かと、、、。縮尺をS=1:400に統一して載せているところがニクいです。ここでは塚本氏のプロローグを引用しておきます。
われわれの評論が10年後にまったく読むに値しないものになっていたとしても、この図版のコレクションは輝きを失わないと断言できるぐらいに、日本の現代住宅は厚みがあるということを、改めて実感している。
──上記「現代住宅研究」より引用
資料としてヨイというのも失礼な話ですね。すみません。ともあれ、設計業界で話題になった住宅ほぼ全てを網羅的に収録し、これを体系的に論じているその労力には脱帽です。割合に平易な文章(建築を学んだ人にとっては、かも知れませんが)で書かれており、一つの視点から現代住宅の全貌を見渡せるような気がするという意味でもおススメ本かと。でも、家を建てたいんだけど、どんな家にしようか、と思っている施主および施主予備軍の皆さんには、あまりおススメしません、、、。いやいや、こんなのにハマって「住宅は住みやすさじゃない!コンセプトだ!」とか言い始めちゃったら建てられなくなっちゃいますよ。きっと。
住宅には様々な楽しみ方があるという意味で、なかなか面白い2冊をご紹介いたしました。(と、紋切り型にまとめてみました。)
編集長的にはどっちもかなり好きな本なんですけどね。
※「間取りの手帖」の著者 佐藤和歌子さんには、著書としてこの続編である「間取り相談室
」というのもあります。「間取りの手帖」よりも「相談」と「回答」という形での文章部分が多く、「狙った」感が前面に出ている気がしてしまうので、編集長的には前著の方がスキです。しかし、トンデモ間取りの勢いはとどまる所を知らないという感じで面白いですよ。興味のある方はそちらもご覧になってはいかが?。
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コメント
「現代住宅研究」、INAX出版だけにと言うべきか、うちでは見事にトイレ本(う○このとき読む本)と化しています(^^;)
しかし、縮尺S=1:400がニクいってのはどういう理由に拠るのでしょうか?
私的には文庫的に携帯するには分厚すぎるし、この際、A5かB5判で出してもらってもう一回り大きな図面を載せてもらいたかったな〜ってのが正直なところです。まあ、そこが建築をちょこっとしか学んでない人とちゃんと学んだ人との差(記号認識上の)なのかもしれませんが(笑)
投稿: m-louis | 2005.05.27 15:17
「間取りの手帖」は発売してすぐに書店で衝動買いしてしまった本です。
間取り好きです、昔から。
母も新聞にはさまった不動産広告の間取りを見て毎朝いろいろツッコミ入れてます。
たぶん遺伝子でしょう。
この本、著者が楽しんでつくっている感が溢れてるなあと思いました。
投稿: きつねっこ | 2005.05.28 00:41
「INAXだけに」に(爆)。
m-louisさんいらっしゃいませ。昨晩は失礼をいたしました。
S=1:400がニクいってのは、大した理由じゃありません。そもそも建築図面でS=1:400を使うことは少なく、そういう意味ではイレギュラーです。
しかし、それぞれスケールを明記すれば縮尺なんか統一しなくても正確な情報を伝えることができるにもかかわらず、紙面の都合も考慮してスケールを無理やり統一しているところが、それぞれを比較する時に大変役に立っている点は大変評価できます。
さらに言うなら、巻末のS=1:600は平面を知るにはちょっと無理があることを考えると、S=1:400はたぶんぎりぎりの選択だったのだろうな、とは思います。
ちなみに、鉛筆で人の平面図を描けるぎりぎりのセンがだいたい1:400ぐらいじゃないかなと思います。1:500でも描く人は描きますけどね。
投稿: あさみ編集長 | 2005.05.28 20:04
きつねっこさんもマドリストでしたか。
楽しそうに作られた本ではありますよね。
間取りをさらに楽しそうにアートにしている作家さんを、ちはるさんからご紹介いただいております。ぜひそちらもご覧あれ。
ちはろぐ
http://chiharu.way-nifty.com/blog/2005/05/nakamura_kengo.html
投稿: あさみ編集長 | 2005.05.28 20:07