ツールとしてのCAD(1)
今日の記事を書くきっかけとなった巴香堂さんにトラバ
普段私たちが図面を引くときには、CADを使っています。分からない人のために解説するとCADというのは、普通私たちはキャドと呼んでいるもの。「この先の交差点を右に曲がって、3軒目のたばこやさんのCADを曲がって、、、」て、これこれ、それはカドやんけ。
もとい。
CADというのはComputer Aided Designの略。つまり電脳支援デザイン(電脳支援設計ともいう)という意味。平たく言えば、コンピュータを使って設計をする(あるいは図面を書く)ことを指します。CADソフトというソフトウェアがあって、これは設計に特化したドローソフトみたいなもので、基本機能としてはAdobe Illustratorとあまり変わりません。このCADソフトのことをCADと呼ぶことが多い。
電脳支援設計と言っても、設計の何もかもを支援してくれるワケでは全然なくて、施主の意向や周辺の環境・敷地の形などをもとに、どんな配置にすればいいか、どんな外観デザインにするのか、というようなコトを、私たちの替わりに考えてくれるワケではありません。
つまり、結局は図面をキレイに書くためのドローソフトで、これにいろいろな機能がついているだけのもの。いつも使っている納まりをデータとして使い回せたり、立体にしてぐるぐる回せたり、仕上の積算と連動してくれたり、法律上どこまでの大きさのものを作ることができるのかを計算してくれたり、他に何かあったかな、、。ま、そういう機能がついている。
まれに、モデリングソフトと連動させたり、3次元スキャナと連動させたりしながら、特異な形を生み出す手だれもいることはいますが、まあ、電脳支援といったところでその程度。
実は、3Dのコンピュータパースに「おおっ」といって驚いてもらえるのも今や過去のことになりつつあって、今設計コンペでケンチクカ皆がやっていることと言えば、CADで書いてプリンタで出力した図面やパースを手描きでトレースして色鉛筆で色塗ったりしている。
このコンピュータ離れ&手描き回帰の動きと、都市における逆ドーナツ・逆スプロールの流れと、スローライフの流行は、意外と根っこが同じだったりするんじゃないかなと思っているのですが、さすがにこれは飛躍しすぎているので、また今度
建築に限らず、家具でも工業製品でも、そうなのですが「何もないところから始まって、何かモノが作られるとき、そこには論理の積上げだけでは解決し得ないある種の跳躍が必ず発生する」もので、デザインというのは言ってみればこの跳躍の部分にキモがあると言って良い。
そして、この「不連続」を飛び越えるためにはある種の「エネルギー」が必要であって、このエネルギーを使って不連続を飛び越える行為がデザインであり、その主体がデザイナーと呼べるのではないかとこのブログで誰かも言ってました。
そして、今のところ、私たちに替わってこの跳躍をしてくれるようなCADソフトは存在しないし、これからも、そんなものは出来ないだろうと思います。
で、ここまでが前置き。実はここから先が今日のテーマのつもりでしたが、今日はこのくらいにしておきます。明日は「ツールはデザインあるいは人の思考にどれだけの影響を与えるか」をテーマにしてみたいと思います。CADは建築デザインに影響を与えているのか、とか、ブログという形式は人の文章にどれだけ影響を与えるのかという話も。(<いや、さすがにそこまで踏み込むのは無理かなあ。たいがい予告するとダメなんですよね。編集長の場合)
【4月16日追記】
CADがらみでは「あさみ新聞」に「設計作業中」という2004年10月のエントリーがあります。コメントを含めてご覧下さい。
| 固定リンク
「03評論欄 (建築論)」カテゴリの記事
- 携帯の鉄塔は景観阻害要因か?(2004.09.30)
- 景観条例 〜今、京都で起きていること〜(2006.12.26)
- 働いてみたいオフィス(2006.12.07)
- 学校への愛着は校舎に宿るのか(2006.10.14)
- 「イイ」の発見(2006.06.13)


コメント
相変わらず施主ブロガー間では廃れない建築「家(か)」問題について私も改めて書こうと思って頓挫しまくっているのですが、実は昨日のあさみさんとのコメント合戦は幾つか自分の中での靄を晴らしてくれたようで、幾ばくか展望が見えてきた感じで感謝しております。
しかし、私もそのまだ書き得ぬ論考の中で CAD のことにも触れようと思ってたんですよね。あさみさんのタイミングのよいエントリーに驚くと同時にこのテーマの展開、期待してます。予告するとダメなんて言われてるのでこれ以上は書きませんが、なんか便乗する形で書けそうな気がしてます。
投稿: m-louis | 2005.04.16 02:01
私が学生の頃は、コンピューターなんかでデザインができるか!という主張をしておりました。頃はCADの創世期、京都工芸繊維大学には山口先生というCADお宅がおりまして、「全てのデザインをCADでやらせるのが夢だ」と豪語しておりました。いつも大喧嘩しながら、単位なんかくれんでも良い! とさけんではコンピュータの悪口を言っておりました。その私がいつの間にやらコンピュータの前でしか仕事をしなくなってしまったのでした。今からおもうと、どちらも極端でしたね。
投稿: 西 天平 | 2005.04.16 12:32
>m-louisさま
お気づきのこととは思いますが、意識していたのは「家(か)」問題ではなかったものの、(ブログを含めた)ツールが引き起こす何かという問題ではありました。
世間一般で言われているような「ブログの可能性」論みたいなものに過剰に与するのは「たかだかツールじゃん」と思っている私にとって、心情的にはイヤな部分があります。なので、この新聞で「ブログ論」あるいは「ブログによるコミュニケーション論」みたいなものは意識的に避けて通ってきました。(たぶん今後もそうだと思いますが、、)
しかし、実際にこうしてm-louisさんのような方と(多少は(笑))有意義な議論ができることを思えば、ブログの可能性みたいなものを少しは意識しないといけないのかな、と思ったり。
とりあえず、ブログなりCADなりのツールが人に与える影響について考えてみたいなあなどと思ったりしているのです。
投稿: あさみ編集長 | 2005.04.16 15:19
>西さま
いつも投書ありがとうございます。西さんのような、テレビなんていう文明の利器が後から来た世代(ですよね?街頭テレビで力道山とかそういう時代の人じゃないですか?行き過ぎ?)にとってのコンピュータってのはそんなものかと思います。いや、何も世代差を強調する気はありませんが(笑
かつてこの新聞でも紹介しました(ネット王子とケータイ姫)が、今や大学生にも「携帯電話のない時代というのがあったらしい、その頃人はどんな暮らしをしていたんだろう」なんて言っちゃう人が発生している時代です。
建築設計業にも「CADのない時代に、人々がどうやって計画したり、デザインしたりしていたんだろう」と考える人達が増えて来ているのではないでしょうか?そこに新しい可能性をみるか、そうでないか、は今後また考えたいと思いますけど。
えっ私?
私はやっぱり身体を使わないと理解できません。
(といいながらマウスを握ってみる)
投稿: あさみ編集長 | 2005.04.16 15:53
m-louisさん宛に追記
CADがらみでは「あさみ新聞」に「設計作業中」という2004年10月のエントリーがあります。コメントを含めてご覧下さい。(本文にも追記)
投稿: あさみ編集長 | 2005.04.16 15:53
しかし、冒頭のネタに誰も突っ込んでくれへんなあ。
(いや、だからそれは単にスルーしているだけだって)
投稿: あさみ編集長 | 2005.04.16 15:54
何かと CAD不審人物に間違えられがちな m-louis です。
「設計作業中」拝見しました。コメントの幾つかが削除されてしまってるんですね〜。
削除分がなくなってても大体の流れは読めましたけど、削除の場合ってもちろんコメントした人からの希望であれば仕方ないとは思うんですけど、コメントの順番上ここのところで削除希望が入りましたってのがわかるようになってたらいいのにな〜と思いました。特に議論の内容が深い場合。別に投稿者の名前まで掲載されてなくて構わないので。。
で、私のブログの方でもあくまで「家(か)」問題がメインテーマなので、「ブログの可能性」論みたいなものまでそのエントリーで書いていくつもりはありません。ま、他のテーマで書く可能性はないわけではないんですが。。
ただ、いずれにしてもツールの影響に無自覚なまま論を展開するのはちょっと危険かな?ってのと、あと、CAD ってちょっと他のグラフィックツールとは一般流通の仕方が違ってるように思えるんですよね。私が触れようとしてるのはそのあたりで、そこから「家(か)」問題にまで結びつけようとしてるんですが、それがなかなか難しい>>ってあさみさんが言われてるようにひとさまブログだと平気でこういうことが書けちゃうんですよね(笑)
投稿: m-louis | 2005.04.16 17:10
m-louis様
>他のグラフィックツールとは一般流通の仕方が違ってる
あたりから入るところがさすがですね。編集長とは着眼点が違うなあ。それが「家(か)」問題に結びつく、、、。ちょっと楽しみです。(と、反撃しておく)
当方の続編は今製作中ですが、どうも議論は、あらぬ方向に飛んで行きそうな予感です。
ところでCAD不審人物ってどういうことだすか?
投稿: あさみ編集長 | 2005.04.16 20:08
TB&コメントどうもです。巴香堂です。
学校で講師とかやったりしているとCADのポジションとか考え方って見えてきますね。
ある学校では、手書きで図面を覚えさせてからCADを覚えさせる。もう一校は割と最初からCADベースの授業を組んでいる。一般的には前者が教育上正しいと思われがちですが、私はそうは思っていません。
CADってのは所詮ツールって部分に異論はありませんが、思考の一端を担うツールと解釈すべきだと思います。ツールそのものが、何らかの思考補助的役割があると言った方が適切でしょうか。鉛筆にしても、スケッチブックにしても、模型にしても、2Dcadにしても、3Dcadにしても、グラフィックアプリにしても。
そうした意味では、どのような思考に対しどのようなツールが適切か?
その人の思考過程に合ったツール選びが必要なんじゃないかと思ってます。
ちなみに私の場合、気分によってアナログ(紙、模型など)とデジタル(PC、MACなど)を使い分けます。場合によってはほとんどをパソコンで設計する場合もある(エスキス含め)。ただ一つのアプリってことはなく、Vector、イラストレーター、フォトショップ、FormZ、AutoCad、EXCELなど複数のアプリを使います。
頭の中にある漠然としたイメージを基にツールを選択しています。ツールとの相乗効果がある場合とそうじゃない場合があるのが残念ですが。
投稿: hakoudou | 2005.04.16 20:09
巴香堂さま
どもです。投書ありがとうございます。
>>思考の一端を担うツールと解釈すべき
うむ。編集長もそう思いたいし、そう言う人は多いので、きっとそれが真実なのだろうと予感しているのですが、どうも実感を持って「そうだよねっ!」と膝を叩けないもどかしさがあります。ちゃんと使えてないんだろうね。きっと。
一度、巴香堂さんが
>>エスキス含めパソコンで
やっているお姿を拝見したいです。
「で、弟子にして下さいっ!」って感じですかね。
投稿: あさみ編集長 | 2005.04.16 20:41
以前書いてたものを一旦お払い箱にして、今改めてキーワードをノートに書き出してるだけで、まだな〜んも書き始めてはいないのですが、私のブログは週間ペースなんで、まあ、そのうち書きます。
ちなみにCAD不審人物は「冒頭のネタに誰も突っ込んでくれへん」と言われてるので、笑い飯じゃないですがボケにボケで対応してみたんですが、さすがに無茶あったかな?(^^;)
CADー不審人物って書いておけばよかったか??
投稿: m-louis | 2005.04.16 23:54
私の場合、「仕事始めたときにはCADがあった」タイプなので、機能的なこととか寸法とかを検討するにはCADでエスキースすることも多いです。
アナログ命!の学校でデザインを学んでいたので、意匠的なこととか、おさまりとかは手描きでないと考えられないですが…
使い分けというより、私の場合は「どっちつかず」です(笑)
「電脳支援デザイン」という名前だからなのか、CADを使えない、というか、コンピューターに詳しくない営業マンは、「CADならすぐにプランができる」とか思い込んでるので参ります。
与件を入力したら勝手にCADがプランしてくれるとでもおもってるんじゃないのか?という感じです…
ところで、西様、初めまして。
私、山口先生にCAD(の概念)を教わってました。
アナログ命!な学科の他の先生方とソリが合わなかったのか、比較的デジタルよりな学科に異動されてましたが…
投稿: エヌ | 2005.04.17 00:40
>m-louisさま
CAD不審人物!!
すみません。修行が足りませんでした。そう来たか。
投稿: あさみ編集長 | 2005.04.17 15:11
>エヌさま
ご投書どもです。そうですか。エヌさんは西さんと学校が一緒なのか、、。
「CADならすぐにプランができる」ってのは「ワードがあれば素晴らしい文章ができる」みたいな話なので「アホか」と笑っておけばいいんじゃないですか。
「どっちつかず」でも何でも、目的に合わせて速い方を自然に選んでるものだと思いますよ。
編集長の場合、10cmぐらいのブレはどうでもいいときは手描きになることが多いなあ。CADは常に原寸で立ち現れてしまうところが、なんかしんどいんですよね。(2)で述べている概覧性の問題と合わせて、あいまい性の担保が課題かなあ。などと、皆さんの投書などを読んでいて思ったことですよ。
投稿: あさみ編集長 | 2005.04.17 15:21
これこれ、人を明治の人間のように扱うでない!
私が7才の時には家にテレビはありましたよ。父親がアメリカから帰ってくるときに買ってきた10インチ程度の物で、周波数帯がちがうので、コイルを巻き直したりしていましたが、NHKは最後まで写りませんでした。確かに駅には街頭テレビがあって、みんなで力道山を見ていたのは事実ですが。
ところでエヌさん、私の後輩のようですね。山口先生、確かにほかの先生とはあまりうまくいってなかったみたい。
投稿: 西 天平 | 2005.04.17 16:59
>西さん
あらあら、すみませんでした。歴史認識の誤りをおかしてしまったようです。
し、しかし、アメリカ産の10インチテレビのコイルを巻き直すって、、、。やっぱり「血は争えない」というか、ステキなお父様だったのですね。(ま、まさか、7歳のときに西さんご本人がコイル巻き直したりしてたワケではないですよね。それはそれで「三つ子のたましい百まで」って感じですけど)
でも、やっぱり「街頭テレビで力道山」だったんですね。冗談と思いながら、割と当てずっぽうに書いてみたんですが、ジャストヒットしてました。ってことは編集長の歴史認識を改める必要はないわけか、、。
投稿: あさみ編集長 | 2005.04.17 17:47
おもしろそうなネタやってますね。すっかり出遅れてしまいました。
「設計作業中」のほうも読みましたが、私も編集長と同じような手法で設計しているようです。やはりそういう世代なのでしょうか。
と、いうことでTBいたしました。
投稿: ちはる特派員 | 2005.04.17 21:33
おお。ちはる特派員。ご苦労(笑
投書&トラバありがとうございます。
いつお出ましになるのかとおもってましたよー。
世代論に突入しちゃうとややこしいんですけど
ちはるさんもきっと似たような感じだろうなと思ってました。うふ。(なんなんだ、最後の「うふ」は?)
投稿: あさみ編集長 | 2005.04.17 21:55
ずいぶん時間を掛けて考え込んだ末に
やっとわかりました。CADー不審人物
投稿: 西 天平 | 2005.04.18 11:18
与件を入力したら勝手にCADがプランしてくれるとでもおもってるんじゃないのか
山口先生が目指したのはまさにこれでしたね
投稿: 西 天平 | 2005.04.18 11:20
>西さま
>>ずいぶん時間をかけて考え込んだ末に
修行が足っら〜ん! 「喝だっ!」(なんだそれ)
そうですか、山口センセイを存じ上げませんが、そういう方ですか。それがホントなら困った方ですね。だって、そんなのがあったら、私たち「オマンマノクイアゲ」ではないですか(笑
私が思うに、ちはるさんがご自分のところでお書きのように、
Computer Aided Drawing から、
Computer Aided Dezign へ移行するってのはあり得る。
あと、勝手にプランニングしてくれるというのもあり得る(かもしれない)
でもでも、編集長が主張したいのは、このエントリーでも述べているような「ある種の跳躍」あるいは「不連続」をコンピュータが埋めてくれるような事態にはならないのではないかと思うんですよね。
いきなり話をカッ飛ばして結論だけ言っちゃうけどさ。
そんなコンピュータができたら、人間は何のために生きているのか分からなくなっちゃうと思うのよ。
うんうん。(一人納得攻撃というかなり高級な技を使ってみました。)
投稿: あさみ編集長 | 2005.04.18 21:24