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2005.04.02

まちなみ保存のあり方について

 竹原市が町並み保存を狙った空き家対策としては全国で初めて国に申請していた「まちなみ再生特区」などの構造改革特区計画が十七日、政府から認定された。地元の特定非営利活動法人(NPO法人)や住民団体は「活動の弾みになる」と喜んでいる。
 「まちなみ再生特区」は、江戸時代の屋敷跡や町家が並ぶ市中心部の保存地区が対象。長期留守を含めて約三十軒ある空き家を増やさないよう、NPO法人が物件情報をホームページ(HP)に載せたり、修理をして貸し出したりする。
 「空き家再生の活動紹介やボランティアの輪を広げながら、住民と連携していきたい」と、事業に携わるNPO法人「ネットワーク竹原」の佐渡泰理事長(42)。地元の「竹原町並み保存会」の和泉照夫会長(65)は「守るのは大変だが、壊れるのは早い。特区も活用して、空き家が減ればうれしい」と期待する。
 市は特区推進として新年度、空き家活用や、もう一つ規制緩和が認められた国立公園(黒滝山など)でのイベントに補助をする。二十八日に首相官邸で認定書を受け取る小坂政司市長は「地域の財産を生かし、住民と協働してまちづくりを進めたい」としている。
──「中国新聞地域ニュース050319の記事」より引用

今日はちょっと古いけど小難しいネタを解説します。

構造改革特区とは

構造改革特区というのは、小泉内閣の目玉企画(だと編集長は思っている)で、簡単に言えば「世の中にはびこる多種多様な規制を緩和していくために、エリアを定めて特例措置(規制緩和)を行おう」というものです。エリアを限定して試してみて、うまく運用できることが分かれば、これを全国に広げる形で、いらぬ規制を撤廃していこうというものです。

2003年(平成14年)に始まったこの特区制度、既にいくつかの成績をおさめていて、全国展開が決定しているものももかなりの数(ざっと見たところ50以上はありそうです)があります。例えば、以前メルマガ版の「あさみ新聞 7号」にて取り上げた、介護輸送が道路運送法にひっかかる問題については、この特区による規制緩和で一応の解決(2004年3月施行)をみています。(この話についてはまた別の機会に)

この他、住民票や印鑑証明の自動発行機を役所に設置することが可能になったり、面白いところでは、建築基準法の改正によって、大学の教室の天井高さの最低限度を2.1mとしたりする規制緩和もこの構造改革特区から出ています。(それまで基準法では学校の天井高さは3.0m以上と一律に定められていました。)

このように構造改革特区は、いらない規制の緩和を目的としています。そして、世間知らずな編集長のよく分からないところなのですが、その緩和メニューのようなものも既に国が作っていて、合計130あまりのメニューがコード番号とともに公表されています。ってことは構造改革特区て国のお手盛り企画なのかしら?コード番号のない規制は申請できないんですか?
このあたりはもう少し調べないとわかんないですけど今日のテーマからは、離れていくので省略。(お、寄り道回避しました。)

竹原市ってのはどんなところか

竹原市の特区認定は第7回の認定(2005年3月17日発表・3月28日認定)の83地区の一つです。竹原市は伝建地区(重要伝統的建造物群保存地区:重伝建と略すときもある)を持っていて、この地区で起きている問題を解決しようというもの。以下は竹原市の構造改革特区計画(リンク先にpdf書類へのリンクあり)を参照に竹原市の概略を示します。

竹原市は、江戸時代に始まる塩田経営を基盤が築かれ、良質の塩がとれることや、周辺地域の年貢米の集積地となったことから、廻船の寄港地として発展した町です。当時のにぎわいの姿を残す姿は、安芸の小京都と呼ばれるまちなみとしてのこっていて、上市・下市地区は、1982年(昭和57年)に重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。

この特区では何が緩和されているのか?

竹原市の伝建地区では、後に示すような事情から、空き家が増加しており、これを放置すると、地域の活力が失われるばかりか、伝建地区を維持していくことが難しくなってしまいます。幸いにも、近年、スローライフの実現を求める人々の間で歴史的まちなみが再評価されつつあり、伝建地区への定住を望む声も多くなっているので、こうした人達をより多く呼び込むために、伝建地区で空き家の斡旋をする組織が求められています。

それならNPOを作ってでも斡旋業を始めたらいいじゃないかと、我々素人は簡単に考えますが、実はそう簡単には行きません。実は、この斡旋をお金をもらって行うには、国土交通大臣(または知事)の免許が必要です。(宅地建物取引業法第2条・第3条)

やっぱりNPOでは無理なのでしょうか?でも、既に免許を持っている不動産屋さんが、歴史的建物を相手にしてくれるか分からないし、歴史的建物をきちんと評価してくれるかどうかも分からない。ここはやっぱり地元住民によるNPOを作って、ここがしっかり空き家情報を管理するのが望ましいのではないか?と良識あるまっちゃん(※1)は思うワケですよ。

こういう時こそ構造改革特区の出番というワケ。一定の条件を満たしたNPOに対して、範囲を区切って、免許がなくても宅地建物取引業を営めるようにしようというのが今回の認可内容なのです。

伝建地区に空き家が増えるワケは?

伝建地区を含むエリア(竹原市本町地区)の人口は平成8年から16年の間に11.6%も減少しているといいます。竹原市ではこれを「昔ながらの町並みの維持・保存の必要性から、道路の狭隘さ、下水道整備の遅れなど、生活環境の利便向上が図りにく」いことを理由にあげています(構造改革特区計画)。

今日の最後の論点はここです。そういう認識の仕方でおそらく間違いではないのでしょうし、そこには文化財保護法における伝建地区の扱いにも問題があるのでしょうが、編集長としてはここに異を唱えたい。

文化財保護法に何と書いてあるかは別として、歴史的まちなみの保存というのは、そこに住む人々とセットで考えなくてはなりません。人の住んでいない住宅なんて、もはや住宅の剥製ではあっても住宅とは呼べるものではありません。歴史的まちなみがすばらしいものだったとしても、それを、生きたまちなみ・生きた建物として残さなくて何の意味がありましょうか。

つまり、竹原市が、そこに生活する人々にとって暮らしにくい町をそのまま保存しようとしているのならば、それは、地域住民に多大な犠牲を強いた上で、まちなみ保存を行っているということです。それは行政として正しい態度なのかどうか、もう一度考える必要があります。

要するに伝建地区が大事なのであれば、そこに住む住民も大事にしなさい。ということです。そうでないと「保存=そのまま残す(いわゆる凍結保存)」という大義名分のもとに、市民に当然与えられるべき生活の利便性さえ与えられず「まちなみ棄民」となってしまう危険があります。そうなりゃ住民だって外に出て行くのは当たり前ですよね。

「まちなみ保存=凍結保存」なのか

一方、本紙で何度も主張しているように、建物はその地域の、その時代の人々の生活や文化を映し出す鏡のようなものです。だとすれば、歴史的建物を残すという行為は、その地域・その時代の人々の生活・文化を後世に伝えるものである必要もある。そういう意味では、外観だけ保存して内部の改変を許すというのは間違いであるという考え方もありえます。

建築の歴史を学んで来た編集長としては、この考え方に頷けないこともないのですが、ここではあえて、この考え方にも異を唱えたい。

理由は上記の通りです。「そこに住む人がいなくて何のまちなみか」ということ。もしどうしてもその地域・時代の生活・文化を形として残したいのであれば、古民家園とか明治村でやったらいいのではないか。剥製には剥製の意味があるのです。

ここで、編集長は「その建物がその場所に建っていることのイミ」という歴史的建物の保存を考える際の重要な概念をすっ飛ばして語って来ていることに、自ら気づきましたが、長くなるのでこのヘンにしておきます。

その話は、また今度。


■用語解説

※1 まっちゃん
    :まちなみオタクの人々を指す愛称 (c)あさみ

類似のものに「きんちゃん:近代建築オタク」があります。

語源としては、鉄道マニアを「てっちゃん」と言うあたりに発祥しているものと思われます。基本的に「まっちゃん」や「きんちゃん」は「てっちゃん」と同一視されることを嫌いますが「てっちゃん」の方ではたぶんあまり気にしてないのではないかと思います。

余談ですが、
灘区を愛してやまない人々を「なっちゃん(c)naddist」と言うという説もあります。ホントに余談だ。

2005 04 02 05:33 午後 [14地方版 (地域・まちづくり)] | 記事

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(実は3つのうち2つが編集長のアフェリエイトという仕組み)

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