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2005.03.19

都城市民会館について

都城市民会館の「存続」「解体」を併記した中間報告
 宮崎県都城市の都城市民会館の今後の活用策を検討する「市民会館管理運営対策プロジェクトチーム」が、中間報告を公表した。同会館は、建築家の菊竹清訓氏の代表作の一つで1966年の開館。「現状のまま存続」、「大規模改修して存続」、「解体」という3 つの方策について、コストの積算をしたもの。市民に長年親しまれてきたランドマークを保存するか、厳しい財政状況の中で「結論の先送り」を避けるか、「市民ニーズの確認が必要」として、3案を併記するにとどめた。
──「KEN-Platz (nikkeibp.jp) 050317」より引用

昨日のエントリーにて、建築ネタを予告しましたが、どっちかというと歴史ネタに近いかもしれません。

都城市民会館は、菊竹センセイ(菊竹清訓)のサクヒンです。すぐ見られる場所にあまりいい写真が発見できませんでした。このあたりからたぐって見てみて下さい。編集長的には、かなり暴力的なデザインとも思いますが、カッコイイっちゃカッコイイです。菊竹さんって、やっぱり60年代の人だなあ。

この中間報告書は都城市のホームページから入手できます。(こちら

この報告書では、結局市民の代表者で「市民検討会議(仮称)」を設置することや、構造診断の実施を求めているそうです。構造診断は費用がかかるため、まずは予備診断を行うことにした模様。そして市民ニーズ、経済的検討、文化財的価値を踏まえて2005年度中に市長に最終報告を行うとのこと。

編集長としては、こういう建物も歴史的建物として残しておいてもらいたいと思います。しかし、それは市民の皆さんが考えることだとも思っています。そして、その判断の過程で、ぜひ、この建物の価値(経済的・制度的・愛着的・歴史的・思い出の風景的な価値)を洗い直す作業を丁寧にしていただきたいと思います。

この場合、残すとしたら、どれだけの費用がかかるのかという問題になりますよね。このために耐震診断(上記記事中では構造診断)を行おうというものなのですが、耐震診断ってのは、「まあ、とりあえずやってみよう。」で行うには費用がかかりすぎるという問題があります(この市民会館の場合2300万円位かかるそうな)。

実は、建物がどんな状態であっても、お金さえかければ補強はできます。ほとんど今の技術にできないことはないと言ってもいい。だとすれば、あとは補強改修にどれだけの費用がかかるかが判断の分かれ目になる。実は、基本的に、耐震診断というのは建物を残す(存続させる)ことを目的に行います。(だって取り壊すものに何千万円もかけるのはおかしいですからね。)だから診断の議論は常に補強計画とセットになります。で、あればこそ、やはり、残せるか残せないかではなく、残すとしたらいくらかかるのかという事が問題になるというワケ。

耐震診断なんかしなくても、構造の専門家(設計者ね、大学の先生じゃなくて、、)を一人呼んでくれば、補強改修にどれぐらいの費用が発生するのかは大体分かります。(経済的・制度的に)残せるのか残せないのかの議論をするよりも先に、残したいのか残したくないのか、それは何故なのかという議論をきちんとしておくべきであると編集長は考えています。

近現代建築の保存問題についての試論
さて、この話題をヒントに少し、近現代建築の保存問題について考えてみました。でも、今日は「なぜフルイ建物を
残さなくちゃならないか?」という問題については触れません。この深遠なテーマについてはまた後日。

近現代建築保存の現状
このような戦後建築の保存問題がぽつぽつと出て来るようになりました。初期には、十数年前、都庁舎が問題になりましたね。これらを文化財の視点からどのように取り扱うかということが、新しい問題となりつつあります。昭和以降の建築物で重要文化財となっているのは、未だ、わずかに12棟(出典:文化庁「文化財の保護・有形文化財」)です。(実は、この12棟の内訳が手元に資料がないので分かりません。リストの在処をご存知の方はお教え下さいませ。)この資料をもう少し丁寧に見て行くと、明治時代361棟、大正時代62棟、昭和12棟となっていて、江戸期の1934棟や桃山433棟、室町715棟などと比べたら、ものすごく少ないですね。この少なさの理由の一つには、まだ時代の評価が固まっていないというコトもあるのですが、大正・昭和の建物なんて、実際に使用したことのある人々がまだたくさんいらっしゃいますから、その重要性が認識されにくいという事情もあるようです。こうしたことを背景に、編集長は、大正・昭和以降の建築物がどのように残されるべきなのかを真剣に議論することが急務であると考えています。

手をこまねいているうちに建物は無くなって行きます。

登録文化財の可能性について
そこで文化庁は考えました。第2次世界大戦前後くらいまでの歴史的建物を保存する方策の一つとして、登録有形文化財の制度が平成8年にできています。通称「登録文化財」と呼ばれています。この登録有形文化財については、文化庁の説明が分かりやすいので引用しておきましょう。

この登録制度は,近年の国土開発,都市計画の進展,生活様式の変化等により,社会的評価を受けるまもなく消滅の危機に晒されている多種多様かつ大量の近代の建造物を中心とする文化財建造物を後世に幅広く継承していくため,届出制と指導・助言・勧告を基本とする緩やかな保護措置を講じる制度であり,従来の指定制度(重要なものを厳選し許可制等の強い規制と手厚い保護を行うもの)を補完するものである。
──文化庁「文化財の保護・登録有形文化財」より引用

のんきにやっていたら間に合わないから、とりあえず登録だけしてもらおう。というのがその主旨。しかし、この登録文化財は、登録に値するかどうかを、竣工後50年を経ているかどうかを基準に判定しています。都城市民会館の竣工は1966年。まだまだ登録文化財にもならないのですよね。手をこまねいているうちに無くなってしまうのを問題にするのであれば、この登録文化財の基準を、少し見直した方がいいのではないかというのが、今日の結論。

皆さんの身の回りにも、「これは残しておいて欲しいなあ」・・・っていう建物、ありませんか?

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03評論欄 (建築論)」カテゴリの記事

コメント

今月14 日都城市長に 市職員で構成する管理運営対策プロジェクトチームから
 「都城市民会館の今後の方策について 報告書」 が出されました。
内容は 市の財産としては価値がないから、財政上の問題からという理由で解体・・・というものです
 そして解体後の跡地利用については、市民の意見を取り入れながら、市民会館を解体するまでに 跡地利用整備計画を策定する。としています。
つまり、解体だけが内部で先行していて、長期展望にたった市民の為の計画ではないといえそうですが・・・どう思われますか?
市民の代表者で話し合われた 五回の懇話会や市が実施したアンケートで半数以上の市民が 何らかの形で残してほしいと願っていることは反映されていないようです 
改修して利用と解体! 相反する意見を議論することは、都城市民にとって 「都城市民であることの実感」「どんな都城にしていきたいのか個人でも考える」 よい機会にもなるでしょう。
2005.12.20

投稿: とみぃ | 2005.12.20 14:03

とみぃさま

投稿ありがとうございます。

そうですか、最終の報告書が出ましたか。取材先では、2006年の12月に閉館するというニュースも拝見しました。

ご意見は本当にその通りだと思います。編集長はこの建物が「菊竹清訓」氏の設計であることに興味がないワケではありませんが、どちらかというと、この都城市民会館の存続を考えることが、まちの将来を考えること、まちのポリシーを決めることであると考えており、その意味で「議論が必要」であると考えています。

都城市民会館存続問題市民懇話会の最終答申では、残すことを前提に考えるという結論が出たようにお聞きしていますが、そういった意見の位置づけはどこに行ったのでしょう?市は中間報告にもあったその他の2案について、なぜその案をとらなかったのか、市民意見はどう反映されたのか、という点について、市民に納得のいく説明をされているのでしょうか?

編集長は、その点が重要ではないかと考えます。

また、とみぃさんのご報告では「市の財産として価値がない」という理由とあります。おそらくこれは、どこの建物保存でも似たような話になりますが、建物売買の不動産価値を問題にしていると思われます。
しかし、営利企業じゃないんだから、保有資産の評価額なんてのは、全く意味をなさないのではないかと思うのですが、どうなんでしょう?
公共の利益を優先する役所が、保有資産の売却による「利益」を期待するのはそもそも間違いですよね。地上げ屋じゃないんだし。(まあ「土地ころがし」まがいのことをし続けている、地方自治体が兵庫県にないわけでもありませんが。)

ところで、この最終報告書の内容、あるいは、最終報告書が出されたというニュースに関して編集部で調査を行いましたが、発見することができませんでした。現地取材班を派遣しようにも、九州に支局がありませんし、スポンサーもいませんので、取材費が捻出できません。

編集長としては是非新規記事として話題を立ち上げたいところではありますが、ニュースソースが不明であるため、本紙編集コードに引っかかって記事作成ができません。(すみませんね。一応新聞屋も組織で運営されておりますので、編集長権限だけではどうにもなりません。)

できるだけ早くきちんと論じたいのですが、とみぃさん。何か公表された情報がネット上で確認できる方法はありませんか?ご教示いただけると大変助かります。

投稿: あさみ編集長 | 2005.12.20 16:13

あさみさま
南九州の小規模都市(この1月1日から町市合併により、市民17万人の新都城市が生まれました!)にある都城市民会館を取り上げてくださり、市民の一人として嬉しく思っております。

新都城市のホームページで、12月に長峯市長に提出された報告書「市民会館は速やかに解体すべき」が見れるようになリました。ご報告いたします。
中間報告書も載っています。数字など細かなことは中間報告書の方が参考になるかと思います。

確かに、昨年の夏に、市民の代表者で話し合われた懇話会では改修して再利用の方向に進みました。ですから、改修の場合いくらかかるのか、再利用の目的別に大まかな試算モデルが載った報告書が出されるかな・・・と期待していましたのに・・・残念です。

あさみ様の
「耐震診断なんかしなくても、構造の専門家(設計者ね、大学の先生じゃなくて、、)を一人呼んでくれば、補強改修にどれぐらいの費用が発生するのかは大体分かります。」  に大変注目しています。詳しく教えていただけないでしょうか?  よろしくお願いします。

2006.1.14 とみぃ

投稿: とみぃ | 2006.01.14 09:13

とみぃさま。ご投書ありがとうございます。

わざわざメールまでいただきましてありがとうございました。
M・A・P代表のH氏より、先日資料がとどきました。
ご丁寧にありがとうございます。

耐震診断なんかしなくても、、、のくだりは、いささか筆の勢いみたいなところもなくはないですが、おおまかなところは分かる、というのは本当だろうと思います。

例えば、都城市民会館の場合は、コンクリート造と鉄骨造を得意としている構造技術者と、技術研究所をもっているゼネコンさん(特にこの場合は元施工が鹿島建設さんのようですから、鹿島さんがいいかも知れません。)にお願いして、構造図を見ていただくことと、目視により構造体の状態をみていただくことによって、ある程度の改修の手法を限定することが可能だと思います。その上で、ゼネコンさんに見積をお願いすれば、おおまかな改修のための費用は出せるでしょう。ただし、人を動かして判断を願うのですから、ある程度の費用がかかることは避けられないとは思います。

保存か解体かという価値判断に際して「改修の費用を想定することが不可能」であるとか「いくらになるのか分からない、そのためにはお金をかけて診断をしなくてはならない」という議論によって、解体が決まるのでは、なんともやりきれません。

もちろん、保存活用が決定した段階で、お金をかけて耐震診断をしなくてはならないので、その点は誤解なきように願います。

さらに誤解のないように申し添えますが、「これだけの出費をしてでも、残していく価値があるのだ」というストーリーの中で保存を位置づけることが必要だということがいいたいのであって、「診断なんか簡単だ」とか「改修費用なんか適当に見積もっておいてよい」ということがいいたいのではありませんので、あしからず。

できることなら、菊竹センセイの事務所にお願いして、構造技術者を紹介してもらうのが良いのではないでしょうか。それがかなわなければ、
社団法人 日本建築構造技術者協会(JSCA)
あるいは、その九州支部
JSCA九州
などの技術者団体に相談してみるのもいいかも知れません。

投稿: あさみ編集長 | 2006.01.14 20:19

 あさみさま

大変ご無沙汰いたしまして、すみません。
その後、今年に入ってから、市民グループ「都城市民会館を守る会」というのができまして、3月から署名活動を始めました。

都城市民会館についての情報を集めたり、調べたりというのは昨年9月から始めておりますが、知れば知るほど 「これは残さなくては…市民会館には都城の文化向上や活性化のために、これからも頑張ってもらおう。都城の宝として、引き継いでいきたい。」という思いが強くなるのです。

市民の多くが愛着を持っていて、何とか残して欲しいと ”なんとなく” 思っています。 その ”なんとなく” の感情がきちんと説明できるものになるよう願っています。 そこにあるのが当たり前すぎて、市民にあまり知られていなかった 「都城市民会館の価値・都城における有意義性」 について、署名活動は知ってもらえるいい機会になる、と考えています。

 守る会では5月下旬までに”1万人署名”をめざして、頑張リます。
今後は、守る会の活動や、進展状況などマメにご報告していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。


投稿: とみぃ | 2006.04.10 02:02

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