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2004.12.15

免震構造の話

清水建設子会社、戸建て免震装置の販売強化−来年度100棟販売へ
 清水建設の子会社のエス・テク・リソース(東京都江東区)は13日、戸建て住宅向け免震装置「ハイ免震」の販売を強化すると発表した。
 9月の免震建築物の告示改正により、戸建て住宅などの小規模建築物でも免震構造の普及が今後期待できることから、実績と計画合わせて現在30棟前後のハイ免震の受注を05年度は100棟に拡大する計画。
(中略)
 ハイ免震はベアリングを内蔵した免震装置、オイルダンパー、電動モーター式の復元装置で構成。
 震度2クラスから免震効果を発揮して地震の力を10分の1程度に抑える。
 震度7の場合で4程度に低減する効果があるという。
 装置価格は住宅建築費の約10%程度。
──Yahoo!News「日刊工業新聞」20040214-08:29より引用

 今日はネタが技術の話なのでまずは技術の話から。
 建物を地震の揺れから守る方法にはいくつかの考え方があって、

1)建物をガチガチに固めて揺れないようにする
2)建物の中に地震の揺れを打ち消すような揺れをつくる
3)建物を柔らく作ってしまう
4)地盤と建物の間で揺れを解消する

 などの方法があります。私には実力がないので明確には分けられませんが1)2)を制振、3)4)を免震という言い方をします。揺れを力で抑えるか、そもそも揺れから逃げるかの違いです。それぞれを概説しましょう。

1)は考え方としては簡単ですが建物が大きくなるとコストがかかります。しかも想定しているよりも大きな力がかかった場合にはかなり激しく崩壊することになりかねない。これは例えばシャーペンの芯の先に消しゴムを刺して芯を揺らしてみる感じです。揺れても丈夫だけど崩壊する時はぱきっと折れる。消しゴムに人が住んでいたら間違いなく命を奪われます。近年、建物を設計する際には、建物の被害を最小限にするという考えに優先して、建物が崩壊した場合にも人が死なないような計画をするのが常道です。例えば、最初に壊れるところを人命に影響のない場所に決めておいて、そこが崩壊することによって地震のエネルギーを吸収してしまうというやり方があります。

2)はちょっと難しい。簡単に言えば、ビルの屋上に大きな振り子を下げておいて、地震が来たらその揺れを利用して反対向きの力を得て揺れを打ち消すという考え方なのですが、それだけ聞いてもピンと来ない方も多いでしょう。実は私もその一人。

3)は、五重塔などが有名ですね。ぐらぐらなものは意外と壊れないのです。豆腐を揺らしても壊れないのと同じですというのも喩えが極端ですが。五重塔ならばいいのですが、普段も風で揺れているような建物では住みにくいですよね。それに構造体が壊れなくても、建具やら壁仕上もぐらぐらに追従するような仕組み(例えばカーテンウォールにするとか)を考えないといけない。

4)が最近あちこちでやられている方法で、これが冒頭の清水建設子会社の免震構造です。私のよく知っているところでは神戸市の旧居留地の15番館(重要文化財)がこの方法で、震災後復元されています(むちゃくちゃお金がかかってますが)。これはもう、どんな地震が来ても大丈夫というものですが、たかだか大きめの住宅に対して免震装置だけで億単位のお金を使っているという点で、重要文化財だということを割り引いてもやり過ぎ感は否めません。これにかかったお金であと1回ぐらい復元できるのではないか。(というのは、私たちがよく言う冗談ではありますが。)

 この「ハイ免震」は解説ページ(http://s-tech-r.com/heigh_menshin/hi_1.htm)を見ていただくと分かると思いますが、コンクリートの床板の上にゴムなどを敷き、その上に土台を施工するという方法です。(割と分かりやすく紹介していますからまあ、見てみて下さい。)この土台を面として変形の少ないもの(面剛性の高いもの)にしないと意味がないので、おそらくこの土台を鉄骨で固くつくろうという仕組みだと思います。

 で、地震でずれたら電動で元に戻す。面白い発想ですね。ただし、水道やガス管はどうなるのか(フレキシブル管などの曲がる材料を使うことになります)とか、建物周囲の側溝との関係とか、建物が動いて塀に当らないかとか、仕組みは分かりやすいのですが、解決しなくてはいけないことは多いので注意しないといけない。

 新聞記事によれば建物建設コストの約10%だとあります。2000万円の住宅であれば、2200万円出せば免震にできるということですね(いや、詳細は知りませんよ)。10%で地震から財産を守れると考えれば「買い」かも知れません。あ、ただし地震で怖いの2次災害としての火事ですから、お隣が火を出したらせっかくの免震も効果がなくなるおそれがありますね。そういうことはメーカーさんは書かない(というか、書けない)ので注意して下さい。

 こういうモノを見る度に思うのですが、せめて7%増程度で施工のできるシステムにしてもらって、その5%は国が消費税を補填するという形で補助を出すというような仕組みができたら、消費者としては実質2%増ぐらいの負担になって、もう少し普及するのではないかと思うのですがいかがか?国の皆さん、メーカーの皆さん。施主の皆さん。(3者とも若干の負担をして、皆が得するシステムの完成だと思うのですが、、どうだろ)

 で、最後にこの設計システム。我々設計者も技術を使うために若干の負担が必要になるという仕組みになっています。これをあまり高くすると普及しないという事情も踏まえて、微妙な価格設定になっているところがウマいといえばウマいですね。

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05技術欄 (建築・リフォーム)」カテゴリの記事

コメント

一瞬、「オイルダンパー」という字が目に入ったので、アクティブサスペンション?とか思って(2)の技術かと思ったら違いましたね。あとで、復元というのが、律儀というかかわいいというか・・・・・。

投稿: ageee | 2004.12.15 06:12

そこを「かわいらしい」と評するあたりがツウですね。でもおそらくその機能がないと普通のお施主さんは納得しはらへんと思わないでもありません。

投稿: あさみ | 2004.12.15 12:07

礎石のうえに柱をのっけるというお寺のような建て方で、広い敷地があれば、地震のときに建物はどこに行くかわからないけど、免振にはなるなぁという話があって、生存確率を高めるというただ一点については、有意義かもしれんと思ったことがあります。あと大変でしょうけど。

その話を思い出しました。

投稿: ageee | 2004.12.15 12:53

県の文化○室のムラ○ミさんが(伏字なのはGoogleよけです。すみません。)そんな話をしていたような、、、、。あとが大変ですね。確かに。

投稿: あさみ | 2004.12.15 19:28

ちょうど、五重塔に関するニュースがあったのでコメントさせていただきます。
http://www.asahi.com/science/update/1213/003.html
どうやら五重塔が倒れない理由はまだ解明できてないようです

しかし「模型は借り物で1基約5000万円と高価」とあるが、いくらでレンタルできるんだろ~。それとも7泊8日で5000万円とか?

投稿: ともぞ | 2004.12.15 22:33

ちょうど、五重塔に関するニュースがあったのでコメントさせていただきます。
http://www.asahi.com/science/update/1213/003.html
どうやら五重塔が倒れない理由はまだ解明できてないようです

しかし「模型は借り物で1基約5000万円と高価」とあるが、いくらでレンタルできるんだろ~。それとも7泊8日で5000万円とか?

投稿: ともぞ | 2004.12.15 22:41

ともぞさんこんばんわ。ようこそお越し下さいました。
実はYahoo!Newsで見て、タイムリーだなあなどと思っておりました。しかし謎なのか?それは知らなかったあるよ。
常識の非常識シリーズ(万里の長城は宇宙から見えないって奴ね。)に加えなくてはなりませぬ。
またどうぞお越し下さいませ。

投稿: あさみ | 2004.12.15 23:32

五十塔は面白いですね。構造の木村俊彦先生は、最新の構造解析を行う傍ら五十塔の研究なんかもやられていた様ですよ。今の建物は二次設計で100年ですけど、なんつったって1000年以上保ってる訳だから、、、、

ちょっと、五十塔の話は木村先生にお話伺った記憶もありますけど、うろ覚え。以下、いろいろソースが混じっているけど私見。

柔構造というのは、層間変位を許容して、その靭性をもって耐震性を確保するという考え方ですが、これだけだと、五十塔は説明つかないらしくて、心柱がカウンターウェイトの様に働くとの説もある様です。この場合は、今でいうところの制振に近い方式と言えると思います。これだけで説明つかないというのは、木造の伝統の工法の場合、応力の伝達の仕方がきちんと把握できないことが挙げられるのはご承知の通り。たしか、僕の記憶では、木村先生は、構造解析技術を考え、もう1970年代にはコンピュータで構造解析をしていたので、五十塔をモデル化して、その挙動と心柱の関係を形式化してたんじゃないかな?

応力の伝達を把握するのが難しくて、かつ、接点の固定度により各部材の負担率が変わるのが構造設計の基本だけど、科学の目でみてみると、脚もとの固定度が低い分床の剛性に期待するとか、軟弱な接点に瓦の重量がのっかって固定度をあげるとか、昔の工法は上手に木とつき合っていた様です。僕は、なにがなんでも住宅を木でつくんなきゃなんないとは思ってませんけど、こういう先陣の工夫は還元して捉えると新しい考え方のきっかけになるので面白いと思います。

ちなみに、所謂免振支床による免震機構の場合、建物が水平方向に『うごく』ことを許容するので、地面に『固定』されている時とは力の流れや設計上の抑えどころが異なる様です。『うごく』わけだから、建物がバランスの良い重量配分で固いことが、直接基礎の場合より重要になると聞いたことがあります。また、免震支床の機構上、十分な加重がかからないと浮いたり転倒するから、重たい建物の方がいいみたい。本来は木造住宅に使うのは結構制限でると思います。もう単なる箱みたいな話になりそうです。

技術は、それをもうすこし人の暮らしに直接的な形で用いる方がいいんじゃないかなとまずは思ったります。単なる技術を活かす視点がないとつまんないですよね。

ではでは

投稿: 202 | 2004.12.16 00:36

件の15番館は、免震効果を得るために建物重量を上げようと、基礎底盤の厚みを1m以上あるバカでかいモノにして、その下に免震装置を入れています。実は、今回の記事で密かに私が気にしていたのもそこのところで、重量を上げる工夫をしなくてもいいのかなっていうのが気になります。そのあたりは極めて専門外なので、誰かフォローしてくれないかなっと。人に投げてしまう無責任な編集長でした。
っていうか、明日朝〆切仕事があって、どうにも取材活動ができないのだな、、、。わはは。

投稿: あさみ | 2004.12.16 00:53

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