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2004.11.26

災害の記念碑

黒焦げの壁保存に賛否 墜落事故から3か月
 黒く焦げた壁は「歴史の証言者」か、「心の痛み呼び戻す異物」か-。米軍ヘリ沖国大墜落事故から3か月余りが経過した現場では今も、事故の傷跡が残る。学生が現場保存に向けた活動を行う一方、「壁を見るのはつらい」と複雑な心境の被害者もいる。大学では「保存」の賛否をめぐり教職員が集まる初の意見交換会が24日に開かれる。
 13日現在、保存を求める署名数は同大の学生を含む5447人になっている。未署名の学生にも「保存派」は多い。(中略)
 被害者には現場の建て替えを望む人々が少なくない。被害者の一人、中古車販売店主の中村健一さん(34)は今月7日、ほぼ3か月ぶりに営業を再開させた。
 再出発で笑顔は戻ってきたが、「校舎の黒い傷跡は心の傷に染みる。保存の声は十分理解できるが、素直な気持ちは壁の解体だ」とジレンマを抱える。  現場には観光バスが訪れる。「現状を知ってほしいが、興味本位の人もいて、やりきれない。早く普段の生活に戻りたい」と訴える。
 被害を受けたマンションに住む30代女性は「現場を見て、被害のひどさが分かったと言う人もいるが、壁を見るのはきつい」と胸の内を明かした。(後略)
──Yahoo!News『琉球新報』20041122,10:54

 これは沖縄の話、保存に賛成する人も反対する人も、想いは一つ、基地の撤退なのだとまとめられていおります。この話を読んで、阪神淡路大震災の被災者でもある編集長は少し考えました。

□阪神淡路大震災のモニュメント

 神戸の阪神淡路大震災でも同じような話があります。有名なのは「神戸の壁」でしょうか。これは再開発地域内にあったため、結局淡路島に移設保存されています。このあたりの事情は「津名町しづかホール/移築された「神戸の壁」」を見てみて下さい。この他にも阪神淡路大震災のモニュメントというのはかなりの数が存在しています。これらをマップ化したパンフレットをどこかでいただいた記憶がありますが、今手元にありませんが「兵庫大阪にある震災モニュメントのすべて」というサイトがあります。どうやらこの他にもかなりの数があるようです(未確認)が、災害の状況をそのまま残したようなあまり生々しいものは多くありません。

□思い出したくもない

 北淡町に「北淡町震災記念公園」という公園があります。ここにある「野島断層保存館」では、地震でできた地割れや段差を長さ約140メートルにわたって平屋の建物で覆い、当時のまま展示しています。そして、この保存館の隣には、被害を受けた住宅が残されており、家財道具のちらばった様子や、床が傾いたり、建具がうまく閉まらなくなったりした様子が克明に再現されています。

編集長は今年の1月にここを訪れました。断層保存館は解説も丁寧で分かりやすく、何より実物の持つ説得力に圧倒されました。隣の被災家屋は、床の傾きや散らばった家具などが生々しく、いち被災者の編集長の脳裏には様々なことが思い出され、かなり気分がおかしくなってしまいました。

 この記念公園の建設にあたっても、全住戸の9割が損壊した北淡町の地元からは「思い出したくもない」という反発もあったそうです。編集長としてはその気持ちはとてもよく分かります。被災者にとっては、思い出そうとしても思い出されるものだし、そういった施設なんか不要なのです。

□兵庫県「人と防災未来センター」

 先日、養父市の住民の皆さんと「人と防災未来センター」に行って来ました。「人と防災館」の来館者は、まず最初に7分間の映像を見ることになっています。震災の起こった瞬間を再現した、かなりショッキングな映像です。もちろん震災の起こった時にカメラが回っていたワケではありませんからおそらく模型などを使った再現映像なのですが、かなりリアルかつ刺激的にできていて、本当にこんなことが起きたのかと思うような惨状を繰り返し見せられます。神戸や淡路・明石・伊丹などの地震の瞬間を繰り返し繰り返し見せられるので、一緒に見ていた子供たちの中には「もうやめてー」と叫び出す子もいました。放映前に、係員の方が「気分が悪くなった方はこちらから出て下さって結構です」と言っていましたが、本当にそんなことも多いのではないでしょうか。
 編集長としては、ここでかなりヘコタレてしまって、かなり気分がおかしくなった後、実は「なんでこんなにセンセーショナルで刺激的な映像を作って人に見せるんだ」とハラがたって仕方がありませんでした。その次のコーナーの震災直後の街の原寸ジオラマや、その後の「瓦礫に埋まって助かった妹さんと、火事に巻き込まれて亡くなったお姉さんの物語」も涙なくしては見ることができない内容で、編集長はいろいろなことを思い出しながら暗い気持ちになるのと同時に、いっそうハラダタしくなっていったのでした。

□やっぱり「思い出したくない」

 そして、この人と防災未来センターの「人と防災館」には、灘区深江本町(私が被災した所と同じです!)に住んでいた被災者の方が震災の「語りべ」として、来館者にその経験を話すという仕事をしていらっしゃいました。この方も、先の映像は見たとこがなく「見る気になれない」とおっしゃっていたのが編集長にとって印象的でした。

□残し、伝えることの意味

 そんな風に、災害をセンセーショナルに騒ぎ立て、これでもかという風に刺激的に再現して見せるやり方に若干ハラダタしい思いを抱いた編集長ではあります。しかし、被災者でない人たちに災害の恐ろしさや、そこで起こった様々なことを正しく伝えるために、こんな方法も必要なのだなと、次第に思い始めます。
 震災を経験していない人々にその惨状や復興の過程で起きた様々なことを言葉を尽くして伝えようとすれば、それはきっと理解されないワケはないかも知れません。しかし、これを映像の力をもって圧倒的な迫力で一瞬のうちに来館者に伝える、そしてそれを入館冒頭にやってしまう、という手法は、来館者の皆さんを見る限り、かなり成功しているように見えました。「本当にこんなことがあったんですね。」と神妙に展示を見たり聞いたりしている人たちを見て、編集長はそう思いました。

ただ一方で、やっぱり「思い出したくもない」と思う人の気持ちも大切にすべきなのだろうと思います。

合掌

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