セックスボランティア
「子どもを作ることはおろか、セックスも禁止しているという現状が施設の中ではまだある」
「まずひとつには、日本の多くの人たちが、知的障害者や知的障害者の性や結婚に対して、否定的なイメージを持っているという現状があります。彼らを幼児視し、過小評価し、彼らは体が成熟しても性的には成熟しない、性の知識を与えると性の加害者になるのではないか、子どもを育てる能力がない、といった間違った考えや偏見をもたらしてきたように思います。」
「1953年に出された厚生省のガイドラインでは、審査に基づく優生手術(※引用者注:いわゆる「不妊手術」)は、本人の意に反しても行うことができ、やむをえない場合は、拘束しても、麻酔を使っても、騙してもいいと明示されていた。とんでもない内容です。この法律は96年に改正されましたが、長い歴史の中で積み重ねられてきたマイナスイメージを払拭することは容易なことではありません。したがって、優生保護法が改正されてもなお、障害者は子どもを作ることすら認められないという現状があるのです」
───「セックスボランティア」河合香織(新潮社,2004年)より
立教大学河東田教授へのインタビューから抜き書き
今日は、ちょっと違った方面で。風邪引いているあいだに読んだ本からの引用です。建築・まちづくりとは無関係では?と疑問をお持ちになる方もあろうかと思います。しかし実は私の中では、つながっています。
「セックスボランティア」は、これまで触れられずにきた身体障害者の性について、インタビューを中心とした構成により、その一端を明らかにしようとしています。本のオビには「障害者だってやっぱり、恋愛したい。性欲もある。」とあります。本当のことを言うと、実は、本紙編集長としては「そんなのあたりまえじゃん」と若干の反発を覚えながら手にしました。
タイトルからは、失礼ながら「キワモノ」系か?とも思いましたが、実際には全くそんなことはありません。若い著者(30歳)が悩みながら、真摯に障害者へのヒアリングを続けていく様子に好感が持てました。最後まで悩み続けて、結論らしい結論にはたどり着けていませんが、それも仕方ないかなと思います。編集長の読後感は「ああ、すごく考えさせられちゃうなあ」だったのですが、一晩たってみると感想も変化してきていますので、今日は、この変化を中心にお話します。
さて、読後「なんだか考えさせられちゃうなあ」と思った私ではありますが、しばらくこの事を考えるうちに、ちょっと考えが変わって来ました。著者の河合さんがあとがきの中で述べているように「結局は障害者も健常者も変わらない」という視点に立てば、別にそれほど騒ぎ立てるほどのことではないと思うのです。ただし、現在、「障害者だってやっぱり、恋愛したい。性欲もある」と、わざわざ叫ばなければいけない状況を社会が作っているのだとしたら、それは社会が反省すべきことだろうと思います。
誤解を恐れずに言いたいのですが、私は障害者も健常者も、本質的にさして変わらないと思っています。健常者に良い人と悪い人がいるように、障害者にだって良い人も悪い人もいておかしくないし、健常者に性欲が旺盛な人もいれば淡白な人もいるように健常者にも障害者にもいろいろな人がいて不思議はない。下手に健常者とか障害者とかの区分けをするから(区分けしないといけない場合もあるけど)、特殊な話になってしまうだけのことではないだろうかと、今、私は考えています。だから、フーゾクに行きたい人は行けばいいし、一生行かない人だっていていいわけですよね。
そういう視点に立てば、この本にあるように、障害をもつ方が命がけでフーゾクに通うのだって、それは趣味の問題と言ってもいいと思います。(障害を持つ人々にも性欲があるということと、性の商品化を云々することとは、全く別の問題なのでここでは触れません。)それは良いとか悪いの問題ではなく、個人の趣味、あるいは好みの問題だとしか言いようがありません。
そして私の直感を元に話をすれば、問題はそこにはないと思います。ただし、障害者であることが理由でフーゾク店から拒絶されることはありえる。そこは問題にしなくちゃいけない。で、話を複雑にしているのはフーゾクがあまり社会的におおっぴらに認知されていないところにあるのかも知れません。
結局一番問題なのは、機会が平等に与えられないことなのでしょう。ユニバーサルとかバリアフリーの概念もそういう発想ですよね。だから、冒頭の引用にあるような例は言語道断だと私には感じられるのだろうなあ。この引用部分は(実は、このルポで中心にしている問題を扱っている部分ではないのですが)私が最も驚いた点です。こんなトンデモナイことが日本では96年(オイオイそれは既に平成でしょうに・・・)まで行われていたということに愕然としました。世の中は、私たちの世代の感覚に変わりつつある。と一人勝手に思っている本紙編集長にはこれが信じられなくて、まだまだ、時代は私たちの世代の(と複数形にするのはずるいね。「私の」と言い直します。)感覚についてきていないのかな、などと思い直しました。そんな話はとうの昔に解決がついていると思っていたのですが、私の認識が甘かったようです。反省。
ここまできて気がつきました。機会の平等をテーマにした場合、自力で性行為(一人でする場合も二人以上でする場合も含めて)ができない人を手伝うことは機会の平等の補償として正当かどうかというのは議論に値しますね。これが、医療の現場では、普通に看護士さんなどによってボランティアで行われているといいます。
この本では、障害者と性行為をするボランティアを取り上げて「そういう人もいる」と述べている一方で、そういったボランティアが無償で行われると、金銭の授受をする場合に比べて「恋愛感情が発生しがち」であることが問題だとしています。でも恋愛関係のない性行為ボランティアという発想そのものが、私にはどうしてもうまく消化できないなあ。
あ、やっぱり「なんだかかんがえさせられちゃうなあ」に行き着いちゃいました。ごめんなさい。
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コメント
いや、そもそも、恋愛というのには、機会平等もへったくれもないきがするんですが、、、、
僕なんか見込んだし、、、、ううううn
投稿: 202 | 2004.11.18 01:54
いや、おっしゃる通り。へったくれなんかないんですけどね。
それが障害者の問題になったとたんに話が微妙な様相を帯びてくるのはいったいどうしたことか?というのが私の中にある。
ところで202君。誤変換多くない?ネタとは思えんが。
見込んだし=未婚だし?
投稿: あさみ | 2004.11.18 13:59
私も先日このショッキングな題名に引かれて
すこしジュンク堂で立ち読みしました
私には事は複雑過ぎてパタンと閉じて置いて帰りました
ボランティアでセックスするのが私には理解できないです
悪い事ではないのでしょう
しかし,このボランティアは根本的な解決に繋がらないという認識が著者に有るのでしょうか?(ちゃんと読んでないから・・わからんですが)
なきゃ本出さないですよね,多分
投稿: ina | 2004.11.19 03:44
そうなのよね。根本的な解決につながらない。かといって根本的な解決をするためにどうしたらいいか、良くわからないというのがホンネ。で、著者もそのへんは苦悩してて、苦悩したままレポートにしているという感じです。失礼ながら本の完成度は高くなかったです。正直言って。
投稿: あさみ | 2004.11.19 23:54
いえ、IEでは文字化けするわけですが、エイヤーっとブラインドタッチで変換して直うちしてたんですよ。スミマセン。
で、今はエディタで書いてコピペで良い事がわかって、モウマンタイ。
※)
このスレに関しては、編集長が上手くまとめているので、僕は面白い切り口でそうにありません。つまるところ、誰も妨害はしていないし、機会が少ないことの責任も誰にもないので、議論の軸足を見出しづらいですよね。
すげえ陳腐なんですが、特別扱いしないで、世の中で身障者の人が多様な社会参加をできるようにすることが、いろんな機会を得るきっかけになるとしか言いようないなあ。この『多様な社会参加』というのを地道に獲得していくしか無いように思いますが、、、如何か?
投稿: 202 | 2004.11.20 02:30
そうか。IEで文字化けね。問題ですね。不便で申し訳ない。これはココログの仕様か?しかし、ブラインド変換かいね。勇気あるなあ。
確かUTF-8が標準で、このブログもその標準に従っているはずです。Safariでは何の問題もないんですよね。弱ったな。なんか方法あるんすかね。I.M.G.D氏あたりの登場を待とうかな。
はい、おっしゃる通り、どうも先に進まない議論なんですよね。地道に『多様な社会参加』を目指すというのは、遠い近道だと思います。そのために私が何をしたらいいのか、となるとまた少し悩まなくてはいけないのだけれど、、、。『多様な社会参加』を阻むものにだけは抵抗を続けていく、というあたりでお許しを。
抵抗っていうと、またぞろ「レジスタンスだっ」「革命だっ」とか、変なイデオロギーっぽくなりますが「小さなことからこつこつと、、」の理念で、百年殺しを狙って「世界を変えて」いくことにしようかな、、。などと漠然とながら考えましたです。はい。
投稿: あさみ | 2004.11.20 15:50
おひさです。復帰!
はい、読みました。イマイチだけど、まぁ言いたいことはわかる、って本ですね。実は、中に出てくる主婦ボランティアがネットで呼びかけた頃、アエラに彼女の一文が載り(初めてアエラ買ったなぁ)その顛末が見たくて読みました。
これには、深いテーマが隠されています。
別に「障害者」だからどうのこうの、という問題ではない。
かつては「再生産平等主義」(落合恵美子)的な、「誰でも結婚できる社会」という前提があった。そのときは優生保護法よろしく「障害者」は排除されていたけど、いまは違う。障害者もちゃんと組み込まれるようになった。それはいいことだ。
でもその間に、「結婚」と「セックス」は切り離され、今を楽しむためのリソースとなった(上野千鶴子)。ここで大きな問題発生。モテる人はどんどんヤレる。もてない人はとことんヤレない。セックス弱者とセックス富豪。自由で個人をベースにしたコミュニケーションチャンスという、平等な、自由市場ルールの上で、明らかな勝ち組と負け組が分かれたわけだ。そこで「モテる・モテない」という、需要と供給バランスを考慮しない「ボランティア」と「合法的売春」という二つの選択肢が当然発生した。
で、どうなんだよ?ということね。
これは、社会を自由・平等にした結果当然の帰結として発生することです。中国で社会主義をやめたら貧富の差が生まれるように。
で、どのように救済措置がありうるのか?、帳尻を合わせるにはどうしたら良いのか?ということになる。(もしくは「そんな世の中ぶっ壊せ」となるがそれは問わない)
帳尻の会わせ方で、ボランティアがあったわけだが、これも問題有り。それはサービスの受け手(障害者側)ではなく、ボランティア側だ、ということだった。勝ち組が負け組を相手にするときの絶対的な立ち位置の差異が、コミュニケーションを断絶してしまう。富豪が貧者を相手に慈善を行なうような、やな感じがしてしまう・・・それが問題になってボランティアは長続きしない。むしろ売春の方が割り切っていて良い、といえるほど。
それから、inaが言うような「根本的解決」なんて、ありえん。あったとしても、こちら側が変わるしかありません。それは「恋人とするセックスが最高」とは思わないことだったり、みんながみんな売買春する世の中だったりするのではないかな。
作者の河合氏(着飾った自分の写真載せるかなぁ・・)にイマイチ同意できない点として、なぜ、「恋人とするセックスが最高」だと決めつけるのか?がわからなかった。そうではない、彼らの性生活にこちらが羨むような点が少しでも見つけられれば、この本は、もっと可能性があったと思う。そしてそれは不可能ではなかったと思う。
投稿: hira | 2004.11.21 22:25
復帰おめでとう。忙しいのはいいけど、睡眠はとった方がいいですよ。
さて
そこなんですよね。結局議論の行き着くところは、、。確かに貧富の差に例えられると分かりやすいかもしれませんね。そのアナロジーをさらに進めると、ボランティアは生活保護で、合法売春は、えーと、えーと何だ?窃盗とか?ありゃ?なんか話がおかしくなりそうだな。
ま、そゆことだ(ってどゆことよ)。
根本的解決なんてありえないのは確か。hiraさんが言うような構造的問題なのでしょうから、、、。解決策があり得るとすれば、人々の欲望の形を変質させる以外にないのでしょう。
結婚とセックスが切り離されたというのは議論としてはスルーしてもいいんですが、今を楽しむためのリソースってとこまでいくと、私もちょっと引いちゃうな。なんでかな?議論としては分かるけど、なんか大声で言いたくない感じがするのは私がコンサバテブだから?
んで、さらにわかんなくなっちゃったのは、恋人⇆セックスの関係。初めは「にわとりたまご問題」かと思っていたんですが、どうやらそうではなさそうですね。セックスから特別な意味合いをそぎ落としていった時に残るのは何か、今を楽しむリソースなのか、コミュニケーションの道具なのか、それとも繁殖行為なのかというあたりで立ち止まる編集長なのでした。
本を手に取った時から分かってたのだけれど、かなり深いところにはまりこんじゃった。誰か助けて〜。
投稿: あさみ | 2004.11.22 20:23
初めまして。セックスボランティアを遅ればせながら読みまして、トラックバックさせていただきました。
皆さんのコメントを読み、いろいろと考えさせられました。次作に期待したい思いがあります。
投稿: まざあぐうす | 2005.03.17 17:33
こんにちは突然失礼ですが、[ダッチワイフ ブログサイトと検索]しましたらヒットしましたのでコメントさせて頂きます(^_^)/ 障害者様の性を考えております。
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投稿: ダッチワイフ.JP | 2006.01.29 06:42