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2004.10.18

土佐漆喰レポート&久住章さんのこと

 レポートと言っても大したことは書けませんけど。16日の土曜日に竹中大工道具館に行ったことは携帯からアップしましたが、今日は少し詳しくレポートします。実演は館の北隣の駐車場の一番奥で実施されました。前の日にも実演のあった塗り板が既に並べてあり(これは後で触ったけど、つるつるしっとりピカピカ。手のひらに吸い付くような仕上でした。)その隣の塗り板に漆喰を塗り始めます。
 仕上厚さは全部で約7ミリ。5ミリ程度の中塗りの上に、乾き具合をみながら上塗り。「このタイミングだけは、口で言っても分からない。経験で学んでもらうしかない」と解説されていました。土佐漆喰の特徴は、消石灰にワラすさだけを混ぜていること。普通の漆喰のように糊などは入っていないのだそうです。色はかなり濃いめの茶色なのですが、これが一年かけて白くなっていくというのが、ちょっと信じられない感じでした。その場に居合わせた見学の職人さんも、信じられないと言っていました。

 一人が1日で仕事できる面積は約2〜3平米だそうです。大きな壁は一度にやらなくてはならないので、人の数を増やすしかない。しかし、もともと土佐漆喰は水に弱く、そのため大きな面積をつくらず、水切りの瓦などで区切るため、そんなに大勢でいっぺんにということはないようです。

 とにかく100回、200回としごき、つるつるピカピカにしていきます。いわば石灰とワラすさの固まりが、コテでこすられていくうちに、つるつるピカピカになっていく様子は、見事なものがあります。リンゴを磨くときのことを一瞬思い出しましたが、そんな簡単なものではないようです。見てたら私にもできそうな感じでしたけど、そういうものでもないらしい。
 最後の磨きの工程までの実演はなかったのですが、それは前の日の実演のサンプルを見せてもらいました。キラコという粉を付けて手でこすってピカピカにしていくらしいです。終盤になって(だいたい2時間ぐらいで、1m×60cmくらいの面積を塗り終えました。)かの久住さんの息子さんが現れ、やってみたいということで、実演の手伝いをされていました。やっぱり、コテの当て方などにそれぞれの職人さんの個性みたいなのがあって、後で現れた久住さん(章さん、お父さんの方です)は、あいつはヘタッぴだ(?)などとおっしゃっていました。かたわらでは、10年の経験では10年の仕事、30年の経験では30年の仕事。手で作っていく仕事はやはり経験がモノを言うんだという解説がされていました。

 久住章さんには、久しぶりにお会いしました。本当に神出鬼没な人です。来週末には、久住さんの講演会が同じく竹中大工道具館の主催で行われるので、それは聞きに行こうと思っているところです。

実は、氏とは何度かお仕事で一緒させてもらったことがあります。まだ、あんなに売れっ子になる前には、時々事務所に立ち寄って下さっていたので(会社が淡路行きフェリ−乗り場のそばにあるので、待ち時間があると立ち寄ってくれていたのです。)、設計者が左官仕事を計画する際の心得などをよく聞かせていただきました。
去年の暮れにイタリアの左官屋さんが友人のもとに来たので、是非引き合わせようと思って、携帯に電話を入れたら「悪いなあ、いま、北海道なんや」なんてこもありました。
 せっかくなので、久住さんに 「お久しぶりです」とあいさつに行ったら、「見違えるほど太ったなあ、サボってるんちゃうか?」などとチャチャを入れられてしまいました。

 この久住さんがかたわらで突然始めた「チリ箒の作成実演」が、むちゃくちゃ面白かったです。材料のすすきの使い方や、すすき以外の材料を使うときの心得、保存の仕方、なども大変わかりやすく、そんな話を聞くうちに、チリ箒は、どんどんとできていきます。「簡単そうに見えるけどな、これが大変なんや、まあ、100本も作ったらものになってくる。」との仰せ。チリ箒を作れる職人さんはものすごく減っているけれども、やはりチリ箒は手作りのものが一番使いやすいそうです。見学に来ていた職人さんも「こらぁ使いやすそうやわ。わしも帰ってから作ろう」と作り方を久住さんから一生懸命に教わっていました。なんかこうして伝統技術が継承されていくのも竹中大工道具館の狙い。
 昔は、職人が弟子入りする親方を選ぶときに、チリ箒を見ろと言われたそうです。コテは鍛冶屋さんが作るので、手入れさえしていたらまあ見れるものでありつづけるけれど、チリ箒は自分で作るものだし、手入れも必要なので、その親方がどれだけ仕事をきちんとやろうという気構えがあるのかが一発で分かったとのこと。
 チリ箒に見られる地方色の違いみたいな話も面白かったです。まさに左官博覧強記な久住さんでした。

 左官職人といえば久住さんぐらいしか知らない私には、久住さんの技術がどれだけすごいのか、実は、よく分からないのですが、その話の内容が、全てにわたって論理的で、素人にも分かりやすく、割と「それは経験を積まないとわからん」というようなことを言わないところではないでしょうか。人当たりが良くて気さくだし、経験豊かだし、どんな質問にも自分の意見をスパっと語ってくれる人で、なんか、いつでもどんな人のあつまりでも、人の気をそらさない話の中心人物です。声が大きいっちゅうのもありますが、よくしゃべる職人さんです。

いや、実は久住さんが壁を塗っているところをナマで見たことは一度しかないんですけどね。

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久住さん登場
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チリ箒作成実演

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04紀行欄 (建築・まちなみ行脚)」カテゴリの記事

コメント

はじめまして、あさみさん。
トラックバックしていただいたので、早速訪問させていただきました。

ここのサイトを拝見させていただき、私の設計士に対する見方が180度変えられました。
私の今までで会った設計士の人達は、見せかけだけの奇抜なデザインが主体で、機能的な造りや健康など二の次みたいな考え人が殆どでした。
奇抜なデザインは確かに目に止まりやすく、個性的で魅力的に思えますが、本当に住みやすい家かどうかを考えられているかは疑問です。
このブログには、施主に対する気持ち、物件に対する愛着心、職人に対する気持ち、本当に住みやすい家を造るんだという意識などが文面に凄く出ていて、あさみさんの手掛けた仕事に携わっている職人達に対して、とても羨ましく思えました。

ところで、あさみさんは竹中大工道具館へはちょくちょく行かれるのでしょうか?
私も竹中大工道具館には近いうちに行き、一流の左官屋が使用している鏝を是非、見学してみたいと思っております。
私は家が遠くなので、おそらく何回も行く事は出来ないと思うので、イベント時を狙って行くつもりです。
その際、久住さんの技術を目に出来れば良いのですが・・・

最後になりますが、『左官屋さんの喫煙所』をリンクしていただき、ありがとうございます。
私自身はまだまだ修行中の若輩者で、左官を語るのも恥ずかしいのですが、私自身が体験した事や思った事をこれからもブログを通して伝えていきたいと思っております。
私自身の意見が全て正しいとは思っておりませんので、「これは違うでしょ!」って時があれば、遠慮なさらずにご意見を賜りたいと思っております。
どうか、これからも宜しくお願い致します。

ps:こちらも『あさみ新聞』をリンクさせていただきたいので、ご検討ください。

投稿: 長八 | 2004.10.18 20:35

こんばんわ、呼ばれてまいりました(^_^)
長八さんがお先のようで♪

水練りの漆喰は、やったことないです。
見たかったですねぇ。
農繁期じゃなきゃなぁ・・・・・
今日で稲刈りも終わったので、これからは休日に余裕が出ますけど。
チリ箒も展示してあるのは見ました。
手作りだったんですねあれって。
製作の実演まであったとは・・・ちくしょい(/_<。)ビェェン
私は、既製品しか使った事ないです。
毛のコシが今ひとつだなぁ、とか思いながら使って、ちょっと減ったぐらいの良い所の時間は少しだけ、ってな感じです。
キラコって手の平の小指側のほうで擦ってました?
あっ、前日の施工だったのか・・
父からじいちゃんのやってたのは聞いた事あるんですが、私はやったことないです。
そこまで求められる良い所の仕事って滅多にないですから。
今一件、頼まれかけている蔵の修繕も施主がキッチリ者だから、時間掛けてられないし。
そうそう、館内の京都の人の展示してある所にあった左官雛形、オレ持ってます。
今、膝の上に(笑)
あと和洋家屋建築雛形ってのもあります。
明治34年発行ってなってるな。
じいちゃんか親父のものですけど、オレが保管してます。
結構貴重なものかな?と思って保管してたけど、やっぱり現存してるのって少ないんでしょうか?
来週末の公演って「技と心」ですね。
行けたら行こうかな、ツーリングがてらに。
ツーリングがメインだったりして(笑)

投稿: ひろき | 2004.10.18 21:50

お二人の訪問ありがたいです。こんばんわ。
■長八さま
 そんな立派なものではございません。皆でよりよい建物をつくろうというのが現場の基本だと思っています。まだまだ分からないところも多いですし、こんな時どう納めたらキレイなんだろうって悩むこともしばしば。そういうことは現場の職人さんに相談しようと思ってやってます。(だからといって、責任まで回避するつもりはありませんけどね。)だから職人さんたちの言葉の一つ一つが勉強です。こういう形で職人さんとお話ができるのは私としてはすごくうれしいです。お褒めいただいてしまったので、良い設計者たるよう、気を引き締めてがんばります。自分の態度を見つめ直すよいきっかけになりました。ありがとうございます。
 長八さんはなんていったって「長八」を背負っているくらいですから、その気概や相当なものがあるのでしょう。ステキですね。頑張って下さい。私もがんばろっと。
 竹中大工道具館は職場から歩いてすぐの所です。でも、はずかしながら、何かきっかけがないとなかなか足を向けることはありません。地下のビデオライブラリーにビール片手に陣取って、1日中ビデオを見ていたいとはいつも思っていますが、、、。「ヤリガンナは腰で使う!」とか、そういうのが楽しい。
 ところで、長八さんのブログのオープンシステムの話は、思い切り耳が痛くなる話でした。これについては、いろいろと触発されて思うことがあるので、いずれ書きます。
 そうそう、リンク当然OKです。ぜひよろしくお願いしますっ!
■ひろきさん
 キラコの塗り方は見せてもらえなかったのですが、学芸員の方が、水が出なくなるまで手で仕上面を擦らなくてはいけないと言われてて、手の小指の外側で擦っていたら「それじゃだめだ」と言われたそうです。手の平の手首に近い根元の親指の下と小指の下の膨らみのところで擦るんだそうです。なんでかは知りません。ごめんなさい。
 確かにチリ箒(何に使うのか教わるまで全く分からなかったです、、、。チリも柱のチリと言葉が結びつかなくて、ゴミのチリだと思っていたし、、、。アホ。ほんまにプロか?)の製作は保存版でしたね。ビデオとか撮ったらいいのに>道具館。で地下で見られるようにしたらいいのにね。ビール片手に、、、(笑
 ところで、すごいですね。親子3代左官屋さんなんですね。久住親子の会話もなかなか面白かったけど「あれってどんな意味があるん?」「あれはな、・・・ってすんねん。だからな・・・」弟子であり息子であるってどんな感じなのかなあ。と思いつつ、、。また遊びに来て下さいませ。では。

投稿: あさみ | 2004.10.18 22:13

暇なんで、何回もリロードしてストーカーの如く(ぉぃぉぃ)見さしていただいております。

私は左官に対して凄く思い入れがあります。
私に仕事を教えていただいた人が、日本で数少ない『本物の左官職人』だった為かもしれません。
私自身、とても不器用で根性と負けん気を剥き出しで鏝を使えるようになったのもあるでしょう。
ただ私みたいな若輩者が長八を背負うつもりは無いのですが、いつかは長八みたいになりたいと願ってHNにしてしまいました。
いつか『本物の左官職人』に・・・

オープンシステムの記事に関して、反論、ご意見などあると思います。
私自身も馴れ合いだけではなく、本音で設計士の方と討論できればと思っております。
その時はどうか宜しくお願いします。

キラコの塗り方の『手の平の手首に近い根元の親指の下と小指の下の膨らみのところで擦るんだそうです。なんでかは知りません。』の理由ですが、私の意見を書きます。
実は手の一番硬い部分が、掌底の部分です。
この部分は拳より硬いと言われております。
つまり、一番硬い掌底の部分を使って、キラコを塗りながら押さえ込みをするのでは無いでしょうか。
・・・っと偉そうに書いておりますが、私自身あまり良く分かっておりません。
あくまで推測なので悪しからず・・・

ps:うちも爺ちゃん(75歳ぐらい)が現役で左官屋やってます。

投稿: 長八 | 2004.10.18 23:20

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