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2004.09.17

私の設計した建築は「物件」なのか?

 いや、そこで「物件」の定義を持ち出しても仕方があるまい。とは思いつつ。

■物件
物品。品物。物品などの動産のほか、土地・建物などの不動産についてもいう。 「証拠―」(三省堂)
 こうして見ると、自分が設計した建築を物件と呼ぶことは、少なくとも三省堂の日本語的には間違いではないということがわかります。

 そうなってくると、建築を物件と呼ぶことが嫌いですと言ってはみたものの、なぜ嫌いかを説明するのは手間がかかりますね。辞書引いたら私の嫌っている感覚にぴったりの表現があって「だから嫌いなのよ〜」と簡単に説明できるものと信じて辞書を引いた身としては残念。

感覚的には、この「物件」がもつ突き放した感じが、どうもしっくりこないということでしょうか。それはどうしてなのか?

 以下ちょっと戯れに詳述してみましょう。(別にヒマな訳ではありません。)

 確かに不動産業界などでは、土地や建物を物件と呼んでいることが多いようです。設計事務所にお見えになるメーカーの営業さんにも「物件」派が多いような気がします。ときどきアトリエ系の設計事務所の方の中にも「物件」派がいらっしゃいますね。
 一方、現場の職人さんで「物件」派の人は見たことないなあ。ゼネコンさんはどうかな、現場の所長さんには「物件」派は、いらっしゃらないような気がしますね。同じゼネコンさんでも、営業の人は「物件」派が多いんじゃないかと思います。以上をちょっと整理すると、こんな感じになります。

 「物件」派
×
一部の設計者
建材メーカー営業
現場の職人
×
ゼネコン現場所長
×
ゼネコン営業
□「物件」派 調査結果 (過去10年間 あさみ調べ)

 こういった区分けをしてみると、ここから「物件」とは何なのか分かって来るかもしれません。しかし、これはあくまで私の管見によるもので、わずかな経験に基づくものなだけに、かなりいいかげんな区分ではあります。第一、現場監督や、現場の職人さんに×がついていますが、経験上、彼らとは、建築を「物件」と呼ばねばならない事態に陥ることがないゆえに実証に耐えるサンプル数が足りないという問題もあります。

 ここに来て初めて分かって来ました。私の言語感覚では、現場の職人さんや現場所長とは「物件」会話を行わないことになっている、ということではないでしょうか。現場での話題は、今動いている現場の建物の話に決まっていて、いきなり部分の話になるか(*1)、建物を呼ばねばならない時は、建物名で話をする(*2)のが普通です。だから「物件」という用語を用いる(*3)必要が生じないということでしょうか

*1 文例
「こんにちは。おつかれさまです。えーと、玄関の床タイルの品番をお知らせします。・・・」
*2 文例
「お世話になってます。K邸の竣工検査の手直しのスケジュールについて・・・」
*3 文例
「どうもお世話になってます。□□町3丁目の物件のことなんですけども・・・」

 こうやって書いているとだんだんと分かって来ます。やはり文章を書くということは大切であるなあと思いますが、それはさておき話を進めます。実は私は、この文を書き始めた最初は、「物件」とは「物件費」などの言葉から連想されるように、基本的には売買を前提とした物の呼び方なのではないかと考えていました。売買の対象としてしか見ていないから、愛情もへったくれもないという感じが漂っているのであろうと。
 これはこれで一理ありそうですが、しかし、そうなると「証拠物件」はどないやねんと言われそうですね。

 実は答えは簡単なところにありました。上記の文例2からも分かる通り、私たちは普通建物を呼ぶとき、必ずその建物の名前を呼びます。「K邸」とか「○○中学校」とか、「△△保育所」などなど。
 それはそうです、名前が付いてんねんから、名前を読んだらいいんです。そうでなければ、建物に失礼です。かわいい我が子を呼ぶ時に「あいつ」とか「あの子」とか言わないし、尊敬する先輩のことを「あの人」とか「件(くだん)の人」などとは呼びませんね。「物件」てのは「件(くだん)のモノ」ということなのかと、今気づきました(*4)。

*4 文例
A:「先輩『あれ』のことなんっすけど、、、」
B:「あー、『あの』建物ねえ。ま、テキトーに処理しといてんか」

 ということで、
「かわいい私の建物を「あいつ」だなんて呼ばないでっ!名前で読んでくれたらいいじゃない。」
という感じであることに気づいた私でした。皆さんはどう思いますか。

ではまた。

2004 09 17 10:59 午前 [02社説  (私の主張)] | 記事

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